同窓生インタビュー

「Dr.634にきけ」第3回 47期 馬場賢典氏 『「薬」について知っておきたいこと』

「ドクター634にきけ」は、医療関係の第一線でご活躍中の同窓生に、専門的な話をわかりやすくご説明いただくものです。第3回は、馬場賢典先生(47期)。テーマは皆様も気になる「薬」。
なお、記事についてご質問がございましたら、ページ最下部の事務局宛メールへお願いします。

『「薬」について知っておきたいこと』

47期 馬場賢典氏 株式会社エスアールディ

47期馬場賢典先生 プロフィール

東京生まれ。硬式庭球部。
1977年東京大学薬学部卒業(薬剤師)、1979年3月同大学院薬学系研究科卒業、1979年4月三共株式会社入社、その後、研究開発、安全性、製品情報部門に関わる。
2005年9月第一製薬株式会社と第一三共株式会社に経営統合、2019年3月第一三共退社。
2019年4月からジェネリックメーカー、共創未来ファーマ株式会社の安全性情報部担当部長。
2022年9月より、医薬品等の開発を支援するCRO(医薬品開発業務受託機関、Contract Research Organization)のひとつである、株式会社エスアールディ(SRD)の事業開発本部/安全性情報管理部にて、医薬品、医療機器、再生医療等製品の安全性業務に従事。現在に至る。

はじめに:「薬」とは

 みなさんは、薬というとどういうものを思い浮かべますか。私は長年製薬メーカーに勤務していたため、もっぱら医家(いか)向けの医薬品を考えます。今では医家向けの医薬品も、先発メーカーが発売している医薬品(先発品)の他にジェネリック医薬品(後発品、以後ジェネリック薬、またはジェネリック)があります。
 医家向け医薬品は、医師が患者の病態を診察、診断し、病状に合う薬を選択して、薬剤師に対して「○○の医薬品をお渡しいただきたい」という指示書、すなわち処方箋を作成し、それに基づいて薬局(薬剤部)で患者に出されるものです。
一方、患者が自分の判断で購入する(処方箋不要な)薬はOTC(over the counter drug)といい、「医家向け医薬品」に対し「一般用医薬品」といわれています。
 「処方箋」からは薬剤師の業務になるわけですが、発売から長い期間経った薬には、ジェネリックが存在します。薬剤師は患者から特段の希望がない場合、今ではジェネリックを選択、患者にお渡しすることが多いと思います。もちろん、患者が先発メーカーの「▲■薬品の◇□がいい」と指定することもできますが、薬の価格はジェネリックより高くなります。
 以上はもうご存じの方も多いと思います。ここからは、多種多様な薬(服用、点眼、皮膚に塗る軟膏、貼るテープ、パップ剤など局所に適用する薬)のなかから、最も一般的である、口から摂取する「経口製剤」を例にとり話を進めていきたいと思います。

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「薬」の不具合

 受けとった薬は、まず外観を確認しましょう。何か気にかかるとき、不具合があるケース、たとえば、カプセルが潰れている、錠剤が割れている、など薬本体の異常、また、PTP(press through package)が一部剥がれているなど、包装に欠陥が生じている場合は、販売会社のお客様相談室(コールセンター)に電話されることが早道です。一方、薬本体、包装の不具合は、薬局、病院の薬剤部に問い合わせることもできます。必ず現物を持っていらしてください。薬剤師は早急に対応を行います。
 外観ではなく、服用後、身体の不調が治らないというケースには、メーカー側は責任をもって答えられません。患者の問い合わせについては記録しますが「患者の身体を一番よくご存じなのは、その薬を処方された医師です」と前置きしたうえで、大抵は「主治医の診療を受け、ご相談いただきたい」と再受診を勧奨いたします。
 上記のような処方箋により患者の手に渡る薬に関する問題は、今述べたルートが最も効率が良い問い合わせ方法であると思います。
なお「一般用医薬品」の不具合や服用に伴う体調の不具合は、買い求めた薬局に問い合わせをお願いします。必ず薬剤師が対応します。

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ジェネリック薬の課題

 定常的に服用する薬については、先発品からジェネリックに変えることにより薬剤費の患者負担は軽減されます。みなさんのなかにもジェネリックを利用されている方がいらっしゃると思いますが、最近はジェネリックの医薬品メーカーが頻繁に変わるという経験をされた方も多いと思います。これは、先発品とは違うメーカーが、原薬を外国から輸入して製剤に仕上げているという事情があり、製造法も先発品とは同じではなく、成分も有効成分以外は先発品と必ずしも同じではありません。この外国依存というところが多くの「ジェネリック薬」の課題であり、一社が販売を見合わせると他のメーカーも出荷制限せざるを得ない状態になっています。
 政府も「安定供給」について医薬品メーカーに確証を求め、確証が得られた後、薬価を定め販売ということになりますが、ジェネリックの医薬品メーカーが変わるという事態が頻繁に起きています。しばらくこの問題は続くとみられ、患者からはより厳しい目がジェネリックに注がれているのが現状です。
 ジェネリックの不具合について医療関係者、つまり薬局、病院薬剤部、医師などに報告された場合でも、その後の対応に患者が満足できず、疑義、懸念が払拭できない場合もありうると思われます。そのようなときには、たとえ薬剤費が高かろうが、その薬を最初に開発した製薬メーカー(先発メーカー)の薬(先発品)に変えるよう、薬局あるいは病院薬剤部の薬剤師に依頼してください。
 これは、ゆくゆくは、そのジェネリックを市販しているメーカーにもフィードバックされ、今後のジェネリックを市販する体制に対してもよい影響を与えることになります。
 上記のような患者からの問い合わせに満足に応えられないメーカーはやがて淘汰されます。患者からの「ひと声」は、メーカーにはありがたい「ひと声」になりますので、気づかれましたらメーカー、薬局、病院薬剤部に是非お問い合わせいただければ幸いです。

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患者申出療養制度

 最後になりますが、まだ承認されていない薬「未承認薬」に関連し、みなさんがご存じでないと思われる「患者申出療養制度」について申しあげます。
 緊急性、あるいは重篤な疾患について、未承認薬等をいちはやく使いたい。保険対象外になっているけれど治験を受けたい。そんな患者の思いに応えるために作られた制度です(アメリカにも似たような制度が存在します)。
 患者からの申し出を受け、医師、および関連の病院等が連携して、様ざまなケースについて対応できるか検討し、実施の可能性を探ります。事前の診療計画や治療の経過等のデータは、今後多くの人が受けることのできる保険、診療のために活用されます。
 詳細は、厚生労働省のホームページで、「患者申出療養を含む保険外併用療養制度」をキイワードとしてアクセスしてみてください。

 「薬」について何かわからないことがありましたら、上記の説明をお読みになり、ご担当の先生(薬剤師、医師)に気軽にお問い合わせください。

 最後までお読みいただきありがとうございます。

(以上)
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